カナリヤ響子ブログ

日々淡々と綴る。今日という日を忘れないように。自分らしさを忘れないように。

さようなら、千歳烏山。ありがとう、千歳烏山(1)

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数日前、東京の千歳烏山というところに行った。

 

実は20代の頃、千歳烏山の隣の仙川という街で暮らしていた。

 

千歳烏山も仙川も東京の電車の中で一番運賃が安いと思われる京王線の駅。

 

 

千歳烏山に行くと絶対に向かうのが、このお店。

 

この辺りでは貴重な喫茶店として知られる南蛮茶館。

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カフェ風のおしゃれなお店なら渋谷に行けば、選ぶのに苦労するほどウジャウジャ存在する。

 

そのウジャウジャにクラっとして、渋谷を抜け出した日が何回あるだろうか。

 

何もかもウジャウジャ溢れてて、クラっとしないほうがおかしいほど。

 

そんな渋谷から千歳烏山には、電車で18分ほどで着いてしまう。

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カフェがウジャウジャ増えてるからこそ、南蛮茶館のような昔ながらの喫茶店でコーヒーを飲みたくなる。

 

確かにそんなあるあるな衝動もあり。

 

でも、私が時々この店に行きたくなるのは、あの頃を思い出しながらコーヒーを一人静かに飲みたいから。

 

 

今さら、あの頃を思い出したところで何も変わりはしない。

 

だから仕方なく、懐かしいなあと思いながらコーヒーを飲み干すだけなのか。あの頃に戻りたいなあと後悔でもしてみるのか。逆に今の方が幸せだなと、無理やり噛みしめるようにコーヒーを飲んで憂さ晴らしをするのか。自分でも色々考えを巡らせてみたが・・・どれも該当しない。むしろ、衝動の理由をさがしているくらいで。

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だけど、数日前に千歳烏山の南蛮茶館に行った時、やっと理由らしきものが見えたんだ。「あの頃、私はなぜ頑張れなかったのか?」にまだこだわってるんだ。あの頃の私は、頑張ろうと思って京都からこの街に出てきた。なのに、こんな時に限って頑張る力が尽きてしまった。なぜ、そんなことになってしまったのか?私はまだ考えているんだ。考えたいから、無意識にここに来てしまうんだね。

ところで、この日はひどくお腹がすいていたから、日替わりセットを注文した。もちろん、セットのドリンクはホットコーヒーだ。メインメニューは、エビピラフだった。

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最初に出てきたサラダには、1000アイランドドレッシングがかかっていた。この1000アイランドドレッシングも昔ながらの味で、あの頃のまま時間が止まっているようにも思えた。だけど、止まっているわけない。現実には、壁にかかっている時計の秒針が動いているんだから、時間が止まるわけないのだ。

ちょうど、夕飯時だからだろうか。お客さんが結構居て、お店のマスターは忙しそうに動きまわっていた。そういえば、このマスターもあの頃と変わっていないような気がする。はっきり顔を覚えているわけではないどころか、当時は間近で見る機会がなかったので記憶は曖昧だが。かなりの年数が経っているのに、あんまり年老いてない。やっぱり時間が止まっているのであろうか。再びバカな妄想を広げてしまった。逃避するのもいい加減にしたいものだ。

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プリッとしたエビが乗った優しい味のエビピラフを食べ終わった頃に、ベストなタイミングでホットコーヒーが到着した。ホットコーヒーの器を眺めながら、ゆっくりとブラックのまま、飲み始めた。そして、店の表の方に目をやった。

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すると、表のドアのガラス越しに一人の女性が通り過ぎたのが見えた。20代前半ぐらいの女の子だろうか。とても細い体をしていた。

それで、ふと思い出した。あの頃の私も、あの女の子のように細い体をしていたこと。そして、このお店の前を何度も通っていたこと。なぜ何度も通っていたのか?それはこのお店を通り過ぎた先に仕事場があったからだ。

あの頃の私は本当に貧乏だった。今食べている880円の日替わりセットどころか、一杯のコーヒーですらも注文できないほど、お金がなかった。いや、しかしお金がないことよりも問題だったのが、元気がなかったことだ。正確には、元気が続かなかった。

生きていくためには、仕事をしなければいけない。この世にお金というものが存在する限り、どうしようもない現実なのである。そして、私は現実の世界で生きているのである。それはちゃんとわかっていたけれども、どういうわけだか仕事が続かなかった。そんな症状に苛まれたのは、この時が初めてだった。自分じゃない自分がもう一人いて、そいつが厄介なことをしでかしているようにも思えてしまうくらい、自分の行動だと思えない行動を繰り返していた。

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表向き愛想がいいから、面接に行くと決まって採用される。即決ばかりだった。だけど数日間働いては辞めて、また新たに面接を受けて、数日間働いては辞めての繰り返し。持っていたお金も底をついて、食べるものもロクに買えない日があったので、とうとう、体重は43kgほどになってしまった。そんなのだから、こんなお洒落な南蛮茶館でコーヒーなど注文できるわけがない。日替わりセットなんかは到底無理。前を通り過ぎるくらいで精一杯だった。少し立ち止まってガラス越しに映る店の中の風景を見るだけが楽しみだった。その後は大嫌いな仕事に行かなければいけなかった。

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日替わりセットのホットコーヒーの量が半分くらいになった時、私はふと思った。多分、私は頑張るタイプじゃないんだってこと。頑張るのが似合わないのだ。なぜそんなことを思ったのか?それは、近くで話し込んでいた主婦らしき女性同士の話が少し耳に入ってきたからなのかもしれない。どうやら中学生の息子が不登校になってしまったらしい。口調は明るく聞こえたが、内容はわりと深刻だったような気がする。あまり触れてはいけないような・・・。

耳を逸らそうと思った瞬間に聞こえてきたのが「多分、うちの子は頑張るタイプじゃないのよ。頑張りすぎると、いつもうまくいかないのよね。」の一言だった。「そうそう、私もそうだよ。」って言いたくなってしまったけど、なんとかして言葉を飲み込んだ。そして、残っていたホットコーヒーを全て飲み干した。

ーーーー続く